長野県の山岳ガイド

おおにしやま大西山(1741m)大鹿村・豊丘村
赤石山脈(南アルプス)と伊那山脈に挟まれた谷間を中央構造線と、それに沿うように大鹿村から静岡
県佐久間町まで秋葉街道(信州街道)が南北に走っている。大鹿村はその伊那山脈の北端にあり、伊那
山脈の末端は天竜水系の支流小渋川に岩壁を落としている。ミロナイトと呼ばれる岩石で構成されて
いる大西山稜線は急斜面で崩落が多くそんな大西山がクローズアップされたのは昭和36年6月のこ
と。梅雨前線による豪雨で大規模な山崩れを起こし、小渋川のせき止めで登山口のある大河原集落は
水没し多数の人命を失う大災害(三六災害)があった山である。現在は災害の復旧跡地には何百本もの
ソメイヨシノが植えられた公園に生まれかわり、近くには中央構造線博物館も建てられている。南ア
ルプスが間近に見られる絶好の山でもあり、今後登山者も増えることだろう。

高森町の天竜川右岸の段丘から伊那山脈を眺望(中央が大西山)

カサカサ音を立てて落ち葉の絨毯を登る■2006.11.18

イラスト登山コースマップ

登山口までのアクセス

中央自動車道松川ICから直進してJR飯田線伊那大島駅前まで辿る。伊那大島駅からは大鹿村大河原

行のバスが出ているが、約1時間かかる。伊那大島駅前を通過すると国道153号を横切り、さら

に天竜川に架かる天竜橋で対岸に渡ると右折大鹿村の標識がある交差点となる。ここからは一本道

で、小渋ダムを右に見ながら幾つかのトンネルを潜り最後の落合トンネルを抜けた先のT字路を右

折する。道路左沿いにある大鹿村役場を過ぎるとほどなく小渋橋に着く。小渋橋を渡り150mほ

ど先にある神社手前を右折し村道を山中に向かって進む。所々に大西山登山口、つり天国と標示さ

れた手製の看板に従いながら終点のつり天国(休業中)へと辿る。

■駐車地:つり天国(休業中)前の空き地に5台ほど(有料1台300円)
     または小渋橋手前の広地に駐車、登山口まで徒歩15分ほど

■トイレ:つり天国駐車地西側に仮設トイレ(つり客用?)
     または小渋橋バス停横若しくは、大鹿村役場近くのビガーランド内


コース解説

駐車地前を流れる小沢に架かる橋を渡り、70mほど行くと右折大西山登山道の道標があり草地の

道を山中に入る。道沿いに馬頭観音石仏があるところから薄暗い樹林の登山道に変わり、さらに右

下を流れる小沢の瀬音が聞こえなくなってくる辺りから急登が始まる。

踏みつけられていると言うより、刈り払いされていると言ったほうが良いほど、勾配はきついがし

っかりした登山道は、主尾根の南斜面をトラバースしながらジグザグに登っていく。登山口の標高

が800m前後なので低山とは言え約1000mの標高差がある。自然豊かと言うべきか、終始ミ

ズナラなどの高木が多い潅木林の中を行くのでほとんど眺望がないため小休止は適当な広地を見つ

けて摂るほかない。きつかったジグザグ道が大分緩やかになり長い直線道に変わる。右側尾根上に

白樺林を見ればトラバースしていた登山道は大きく右にカーブし、カラマツ林とササ原が広がる稜

線鞍部の唐松峠に到着。唐松峠はすでに標高も1600mを越え、単調で辛かった登山道も終わり

大西山山頂まであと僅かな距離。幾つかのアップダウンはあるもののジグザグ急坂より気は楽にな

る尾根歩き、ほどなく三角点柱が埋めてある1617mピークに辿り着く。草地の小高い丘状ピー

クで、大西山の手前にあるので前大西峰と呼ぶことにした。しかし前大西も小休止するには手頃だ

が、周囲が立ち木に阻まれ展望はあまり良くないのが残念だ。

前大西からは緩やかな上り坂になり、ほどなく右に回りこむと大西山稜線で唯一眺望が開ける展望

地に辿り着く。南アルプス方面の立ち木がなく塩見岳や荒川岳の高峰が小渋川の谷を挟んで間近に

見える。ここから山頂までは五分ほどの近距離、展望地に立つ道標にも「山頂はすぐ…」と記され

ている。展望地をあとに山頂に向おう。豊岡村と大鹿村境界線にある山頂も、以前は南アルプス方

面の東方と中央アルプス方面の西側とも切り開かれ眺望が良かったのだが、現在は樹木も大きくな

り展望はほとんどなく標柱と三角点があるだけの寂しい山頂となっている。休憩地は展望地まで戻

ったほうが良いだろう。

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