長野県の山岳ガイド

きんしょうじやま金松寺山(1625m)松本市梓川
山麓の登山口付近に金松寺(きんしょうじ)があることから金松寺山となった何処にでもありそうな
里山で、とりわけ眺望が良いわけでもないし、北アルプスの前山と言っても標高が高いわけでもな
い。しかし戦国の武将武田信玄によって一日二両の金を発掘したと伝えられている「二両沢」には
マンガン鉱や金鉱の跡も見られるロマン溢れる山だ。稜線の西側は、徳本峠へ登り詰める島々谷の
深い渓谷を挟んで、常念山脈最南端の大滝山が延びてきている。静寂の中、野鳥の声と唐松や潅木
の落ち葉の踏み音に耳を傾けながら歩ける晩秋が登山適期。

梓川地籍金松寺付近の農道から展望

ヒノキ林のジグザグ急登は長く苦しい ■2006.10.29

無雪期コースマップ
北ア山麓・梓川周辺エリア・目次

登山口までのアクセス

長野自動車道・松本IC出口信号を右折して国道158号を上高地方面に向う。「新村」信号交差点

を右折して梓川橋を渡り切ったT字路「倭やまと」信号を左折してから直ぐ右折すると大久保集落

に入る。道なりに山中へ向うと金松寺があり、ここから一本道の林道が車止めゲートまで辿る。

■駐車地:林道車止めゲート手前の空き地に数台


コース解説

駐車地脇にある山の神祠を詣でたあと車止めゲートを抜け、沢沿いの林道を歩き出す。緩やかなカ

ーブを幾つか過ぎ、前方に金松寺山の稜線が見える広地が林道の中間辺りとなる。平坦な林道歩き

もそろそろ飽きてくる頃、沢がかなり下を流れているのを見るとほどなく林道終点となり、その先

に登山口がある。登山道は沢筋の右側斜面をジグザグしながら登っていき、山側に掛けられた桟道

で小沢を横切ると水源地標示板のある屈曲地に辿り着くので小休止しよう。水源地を過ぎると急登

が始まり、最初の金網柵を潜り抜けると沢源頭が左手に見える。二回目の金網柵を通過した辺りで

ヒノキ林中に入る。登山道は歩き易く整備されているが、手入れが施されているヒノキ林はいつま

で経っても同じような風景に見え、もっとも疲れる場所だ。もちろん展望はなく静寂さだけならば

ホトトギスやシジュウカラ、コガラを始めいろいろな野鳥の囀りと、遠くで梢を叩くキツツキの音

に耳を傾けるほかないだろう。88番高圧線鉄塔の標示板を過ぎると、薄暗かったヒノキ林も幼木

林に変わり周辺が明るくなって、ほどなく珍木「しだれ唐松」へと辿り着く。周囲のカラマツを見

ても垂れ下がっているものは無く、この一本だけのようで、きっと突然変異で大きくなったのだろ

う。しだれ唐松から右側斜面の高木が疎らになってくるが、背丈以上の草薮が生え、山麓の安曇平

野も一部分でしか展望出来ない平坦道、ほどなく天狗岩分岐地に差しかかる。天狗岩までは一時間

少々の道のりだが、左屈曲して金松寺山に向おう。既にヒノキやカラマツ林はなく、ミズナラなど

の潅木林になっている。あちこちの樹上に熊棚が見られ、太い幹には爪跡さえあり棲息を裏付けて

いる。単独若しくは少人数の時は声を出すか鈴を鳴らしながら歩いたほうが良いだろう。緩やかな

坂路は一息で金松寺山山頂となる。山頂中央に三角点石柱が埋められているが、高くなりすぎた樹

木のため展望はない。休憩は往路を少し戻った展望地で摂ろう。東側斜面の立ち木が間伐されてお

り、眼下に安曇平野が望め、正面には美ヶ原と周辺の山並みが見られる。もともと眺望は期待しな

かった山、一ヶ所でもこのような展望地があれば嬉しいものだ。

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