できるコーチになろう

多くのスポーツでコーチは存在し、それぞれの考え、方向で選手を導き、チームの強化や選手個人の能力を引き出すことに努力しています。コーチは常に考え、悩み、選手にできるかぎりの力で接していることと思います。こうした中で、やはり、コーチの「心」・「技」・「体」この3点が一対となったときの始めて、最大限の力が発揮できると思います。

そこで、チアリーディングに関してのコーチを一般的に見ていると、単に選手の前にいて、「○○○ができていない。」、「○○○は遅い。」など、抽象的な指導をするコーチが非常に多いことに気がつくはずです。この指導法は確かに選手に対して、あるスキルの注意点を意識させるにはいい方法だと思いますが、選手の能力がコーチの考えている以上に低かった場合、全くコーチングとは言えません。

多くのコーチはそのスポーツ分野で過去に経験があったり、活躍したことのある者が行っています。しかし、こういったコーチは多くの場合、自分が選手になってしまっています。これでは、現役の選手に対して、正確なコーチングができるはずはありません。コーチングをする場合は自分が選手の気持ちになってはいけません。あくまで客観的に、どうしてそうなるのか、説明する責任があります。その上で、先の指摘をするのであれば、非常に有効なコーチングガできます。

たとえは、ある指摘をした場合、まず選手に考えさせ、それから、「こうすればもっと良くなる。」と指摘した方が、選手は覚えてゆきます。こうしたことから、コーチはまず「答え」を知っていなければいけません。ですから、コーチは常に自己研鑽が必要であり、多くの情報を集めなければいけません。また、コーチングに関しては「技ができる=コーチングができる。」ではありません。Jリーグなどではいくら有名な選手でも、指導方法がしっかりしていなければ、コーチに就任できませんし、逆に経験が無くてもコーチングに関し勉強し、素晴らしいチームや選手を作り上げたコーチもが数多くいます。

これは決して、経験者がダメだと言っているのではなく、選手とコーチとでは立場も行動の仕方も全く違うということです。また、選手時代おかしいと思ったことをコーチになると忘れ、おかしいと思っていたことをそのまま伝えてしまうコーチもいます。こうしたことも、注意しなければいけません。例えば、「どうしたら、エクステンションできるようになりますか?」に対し「べースは、はじめはこうかまえて、上にあげて、フライヤーは体を締めていなければいけません。ディスマウントは、こうします。後は、練習するだけです。」これではコーチングといえません。ひたすら練習だけでは、コーチが選手時代疲れただけと思っていたことを、やらせているだけです。

また、コーチは選手側の技量に応じてコーチングを考えなくてはいけません。いくら素晴らしい技を教えられる能力があったとしても、それを受け入れられる「体」と「心」が選手側には必要となります。一般的にコーチングは選手の欠点を見ていかにそれを具体的に教え直していくかが役割になりますが、これができるのは選手に欠点を直すだけの技量が無ければいけません。始めたばかりの選手にそれを期待しても根本がわかっていないので自己修正できず同じ間違いを繰り返すだけです。たとえば、チアリーディングにおいて、

経験のあるフライヤーであれば、「バランスが上手くいきません。肩の角度が、悪いかもしれませんので見ていてください。」とコーチにいうでしょう。コーチはそれを見て、「飛び出しの角度をかえてみようか。」そこで、「角度をかえましたが、まだしっくりいきません。肩をもう少しあげてみます。」、「肩と同時に、腰を少しだけ前にする気持ちでやってみようか。」「かなり、前に意識したのですが。」「まだ安定していない。もう少し意識してみよう。」と言った会話が続いていきます。

しかし、これを始めたばかりの選手に望んでもできるはずがありません。それは、その選手がまだ全体の流れを把握していないからです。言い換えれば、イメージとしては理解していても、ぼんやりとしているのです。こうした選手に具体性のない「○○○が良くなかった。」とアドバイスしてもそれを、直す手段を知りません。これでは、コーチは、ただの観客とかわりません。

次に、選手は練習中、感覚でものをいう場合があります。たとえば、「今、何も感じずにできた。」や「ふわっと上がった。」等です。この言葉を、コーチは大切にしましょう。コーチは横から見ているため、どうしても横の動きでしかものを見ることができなくなっている場合が多いからです。しかしながら、多くのスポーツは縦の動きが非常に重要なのです。この感覚が先に記載したコーチングをおこなったとき、選手自身が自己修正できるかできないかにつながっていきます。

これが運動の感覚をのばしていくことになるのです。チアリーディングはリズム、タイミングを大切にします。この運動感覚は、まさしく縦方向の運動感覚にて最も養われるのもなのです。

それでは、この感覚を初心者に理解させるにはどうしたらよいか、これには、指摘するのではなく、選手が心地よい感覚の感想を述べたとき、「その感覚を大切に。よかった。」と言ってあげることです。実感したことを大切にさせるこれがまず第一です。この感覚がない内から、リズム、タイミングをコーチングしてところで、余計選手は迷うだけで、先に進めません。

初心者に対しての指導は、ます、チアリーディングの感覚を養いことが大切です。次に、目的にあった練習方法の構築がコーチにとっては重要になります。「なぜ、この練習をするのか。」を選手に理解させることが大切です。ただ、「やっていれば何とかなる。」、「先輩と同じになるには、同じことをする必要がある。」ではとても効率的な練習とは言えません。

人は皆、違います。当たり前ですが、これを理解していなければ画一的な練習しかできなくなり、一部の選手のための練習に終始してしまいます。ですから、個別とまではいいませんが、スタンツチーム別でも良いので、練習計画をたて、それを選手に理解させましょう。こうすれば、苦しい練習でも先に目標があるわけですから、選手もがんばることができます。

コーチは選手が苦しい表情をしていると効率的な練習を実施できたと錯覚してしまいがちですが、本来の目的にあった練習か、再度、確認する必要もあるでしょう。良く、「頑張れ!」と言った言葉をかけるコーチがいます。これは、気合いを入れる意味において非常に有効な手段であるこことに違いはありませんが、がんばるためには、先の目的に向かっているという意識を持たせることが大切であると述べました。

この一番の方法は、当然、自信を持つことです。では、自信を持たせるにはどうしたらよいか、一番、簡単な方法は、全てが上手くいくことです。全てがその選手にとって上手くいけば自然に自信ができてきます。けれども、世の中は上手くいくときとダメな時があります。

それは、選手にとっても同じであり、全て上手くいくことはあり得ません。それでは、どうするか、この答えも簡単です。多くの指導書や先人の言葉にあるように、人と自分を比べるのを辞めさせることです。他の人よりできるからとか、上手く言ったからといった意味での自信を持たせないことです。

たとえば、チームにチアチームでは一流だといった間違った考えも持たせると、通常、社会生活でのマナー(あいさつ、話し方等)ができなくなる可能性が非常に高くなりますし、修正は非常に困難です。(指導したとしても、一朝一夕に、その気持ちがかわることはないでしょう。人間は多面性ですから、対外的には反省したと見せることは簡単です。(しかし、これを見抜き、修正する力を持つこともコーチとして大切な仕事です。)

それが現れてくると、一気にそのチームへの信頼は無くなります。ですから、他人への思いやり、いたわりの気持ちを持たせていくには、今の自分が、昨日よりも成長したと思わせることが、本当の自信となり、チームにとっても大切なことです。そのためにコーチは、練習状況を記録して、これだけやってきた、できたと選手に見せてあげられるよう努力しましょう。この成長過程を教示することこそ、選手個々の自信となっていきます。

このように、コーチは選手に対して、多くのことを責任をもって実施し、チームの成長を助けなければいけません。選手同士で話し合いながらことを進めていくチームであっても、誰かがコーチの役割を担っているはずです。そうでなければ、指導者だけいて、方向性が定まらず、バラバラなチームになってしまいます。ここにキャプテンの協力があれば、チームは上手く機能していくことでしょう。ただ、キャプテンとコーチは明確に役割、仕事が違います(別項参照)ので、コーチはキャプテンとコミュニケーションをとることは必要ですが、必要以上に、気を使うとコーチとしての本来の役割を果たせなくなりますので、注意が必要です。

最後に、コーチはチームの選手全員の「技」・「心」・「体」を成長させる役割を担っていることを理解し、選手と接していただくことを、第一に考えていただくことを、再度、述べ終わりにします。阿部

ここに記載されたことは、今までの経験や文献を参考として記載してありますが、決して絶対的なものではなりません。チームに対して、選手に対してのコーチングは時と場合により、大きくかわる場合がありますので、参考程度にお読みください。

(参考文献:教育ジャーナル コーチングの視点、AICM コーチの役割)