★ チアは危険なスポーツか?

 

 The Physician and Sports medicine (Vol. 26, No. 9, Sept. 97)の中で、マークR.ハチンソン氏は、「チアリーダーはフットボールより多くのけがに直面する。」と報道する根拠として、ケンタッキーの7校の高校に関する氏の研究を引用しています。

 この記事に対しは別の本では、統計調査の記事に対し、統計調査結果の方法、解釈において誤りがあると反論しています。その問題は、用語「重症」といった言葉の使い方です。ハチンソン博士の定義では「重症」は傷自体の程度ではなく、治療時間を問題にしています。これは本文の中でうまく歪曲され利用されています。

氏は競技中すぐに応急処置ができないことに注目して、「チアに関していえば、フットボールと違いけがは、比較的軽症であるが、処置にかかる時間を考えると、非常に重症になる競技であるこれは、競技中処置することができないためである。」と述べています。

 また同時に、経験不足、練習における安全対策の不備、コーチ未熟性、マット等の未利用等についても言及しています。確かに、後半部分については、日本においても通用する理論であると思いますが、前半については明らかに間違っています。

 

 あるスポーツ用品メーカーがスポーツ時におけるけがの発生を表にまとめたものを発表していますが、次のとおりとなってます。

 

 ●Football - 514,443 Basketball - 326,073

 Soccer - 130,000Gymnastics - 29,132

 Cheerleading - 18,285

 

 この事実から、決してチアは危険なスポーツではなく逆に安全なスポーツであると言うことができます。しかし、氏の指摘どおり、指導者の未熟性が引き起こすけがは、防止のしようが無く、重症につながる可能性が高いのです。普段、安全対策を言っていても、万が一に対しての対処ができない場合は選手のけがが、重症にある可能性があります。

 

 このことから、指導にあたっては応急処置の方法も学習しておく必要があります。技術本位で選手のことを思っていない、指導書の存在は、選手、チームにとって危険であるばかりではなく、自殺行為に等しいと考えます。また、多くの大会でのけがの発生はもっと重大事件として考えるべきであり、小手先だけの改革をしたとしても、それは改悪でしかないと思われるとも、述べられていますが、まさにそのとおりだと思います。

 

 日本では近年あまりに、技術本位に走ってしまった結果、大企業の硬直した状態になり、選手のけがに対しても、日本古来の根性精神的(この精神に関しては、全ては否定しませんが。)な間違った方向に向かってしまっている気がします。また、表向きは周りと仲良くと考えていますと言いながら実際やっていることは、まったく違っているといった、先に述べた大企業の中小企業つぶし的な状態が続いています。

 

 アメリカでも現在、競技会においてこういった状況が発生した時期があり(今は審査員に関しての問題が話題となっている。)そのため、多くの団体の関係者が集まり、コーチ、アドバイザー、ディレクターの団体を作り、毎年、安全のガイドラインを作成しています。とにかく、選手には楽しくチア人生を送っていただきたいと第一に私は考えています。

 

 これはピラミッド系、ダンス系どちらのチアリーダーもです。もともとチアリーダーといった言葉もひとつ、チアリーディングも英語です。アメリカではピラミッド、ダンス同時に大会が開催されているところが多くあります。これが普通であると思います。私自身は個人的にどちらの団体の方ともお話をし多くのことを学ばしていただいていますが、そう変わりは無いのではないかといつも考えてしまいます。

 

 同時に日本のチアリーダーは一種、不幸なところがあるなと感じてしまいます。純粋に楽しみたいと考えている方々の芽は絶対につぶしてはいけないと思います。同時にそれに対しできる限りの協力をするこれが本来の競技発展のための姿ではないでしょうか。そのためには、安全対策にしても、ベアハグといった基本中の基本を教示することも大切ですが、その前に他人の体に触れることを教示しスタンツにおけるスポットの位置取りを教える等、練習に役立つことからはじめるようなシステムを構築していかなければいけないと思います。 阿部